詩の朗読サイト:ぽえむーん


2008年09月04日



動物たちが冬眠する冬でも、街は眠らず動き続けます。
それでも、朝日が昇る少し前、多くの人々が目覚める少し前、新聞を配達する人の目覚ましは鳴ります。
新聞配達員が、寝ぼけながら目をこすり、冬の朝の寒さに凍えながら着替え、白い息を吐きながら外を歩いて配達所まで行き、配達所のスタッフに元気よく挨拶をし、配達所から新聞を各家庭に配る頃、とある家庭のお母さんは一人起きだして野菜を切り、炊き上がったご飯をお弁当箱の中にもって、フライパンをコンロに乗せてガスをつけ、玉子を割り、フライパンの中で味付けをしながら、少しだけレトルト食品で手抜きをして、お弁当と朝ごはんの支度をします。
新聞配達員が、いつものルートを回る頃、少しだけ朝日が見えて一気に空が明るみだします。
いつもの新聞配達のルートでは、晴れの日はおじいさんが早起きして冬でも庭でラジオ体操をしています。
新聞配達員はおじいさんに挨拶をします。
「おはようございます。新聞です」
新聞配達員のいつもの元気そうな顔を見るとおじいさんはにっこりと挨拶をします。
「いつもありがとう」
新聞配達員はおじいさんの「ありがとう」の言葉にいつも心が和みます。
配達員の新聞が残り少なくなった頃、お母さんのお弁当はみっつできあがって、朝ごはんのしたくも終わりました。
お母さんは子どもとお父さんを起こしに行きます。
子どもが口をあんぐり開けて、布団を蹴飛ばして、パジャマから少しおなかを出して幸せそうな夢を見ているとき、お母さんは声をかけます。
「早く起きないと学校に遅れるよ」
お母さんはお父さんも起こしに行きます。
昨日の接待で飲み続けたせいで、部屋の中には少しお酒の臭いが残っています。
お父さんは布団を蹴飛ばして、パジャマから少しおなかを出して、口をあんぐりあけています。
まるで子どもを二人起こすみたいな気持ちになります。
「お父さん、朝ですよ。会社に遅刻しますよ」
小さな子どもと大きな子どもを起こさなければ遅刻してしまいます。
お母さんはお父さんの二日酔いを気遣って朝はコーヒーではなくホットミルクにほんの少々コーヒーを入れたコーヒー牛乳を作ってあげます。
ふやけた声で「おはよう」と目をこすりながら二人は起きてきます。
朝の支度をして、三人が開かれたカーテンからさんさんと降り注ぐ太陽の光を浴びながら、テーブルに並べられたお母さんの作ってくれた朝ごはんに「いただきます」を言う頃、ラジオ体操を終えたおじいさんは仏壇のおばあさんに水とご飯と少々の漬物を備えて手を合わせます。
「おはよう。今日も見守ってくれてありがとう」
そう心の中で自然と言いながら。
おじいさんが手を合わせ終えて、一人でご飯を食べようとしている頃、一人暮らしの大学生はようやく目覚ましでだるそうに起きだします。
昨日友だちと夜まで遅くはしゃいでいた大学生は、実家から送られてきた小包をそのままにしておいていました。
月末でお金も少なく、食料がないから米を送ってくれと催促したら送ってきた小包です。
きっとお米やらなにやら入っているのだろうと思って、朝ごはんの支度をしようと小包を開けてみると、お米や梅干のほかに手紙が添えてありました。
手紙の中は少ない文字で、母のしっかりした文字で二行だけ書かれていました。

 元気でいてくれることが一番の安心です。
 疲れたらいつでも帰ってきていいからね。

いつも母親をそっけなく扱っていた大学生は、母親のあたたかい文字の柔らかさと、その言葉に思わず胸を詰まらせました。
「今日は、実家に電話でもしようかな」
大学生はそう呟いてカーテンを開けると眩しい光が部屋と大学生を包み込みます。
その頃、その大学生の両親は食卓でゆっくりとご飯を食べていました。
ワイシャツ姿でテレビを見ながらご飯を食べる大学生の父親は、目の前で静かにご飯を食べる母親をちらりと見て、テレビのほうを見直して聞きます。
「おい」
視線を向けずにご飯を食べる母親は「なんですか」と言います。
「送った米、ちゃんと届いたんだろうな」
母親は、ふわりと口元に笑みを浮かべてご飯茶碗を持った父親を見ます。
「大丈夫ですよ」
「そうか」
父親はテレビから目を離さずにご飯を食べ続けます。
それがシャイな父親の必死の照れ隠しだと思うと母親の心は朗らかになってきます。
父親がテレビを見ながら息子のことで内心安心しきっている頃、新聞配達員は仕事を終えて家路についていました。
配達員が家について一人でご飯を食べていると携帯が鳴り出してメールが届きました。

 おはよう。
 今度の土曜のデート、いいよ。

配達員はメールを見て飛び上がって喜びます。
配達員がメールで舞い上がっている頃、お母さんの作ってくれたお弁当を持ったお父さんと子どもは先に家を出ます。
「いってきます」
背広を着てビシッとした、大学生の父親も、仕事に出かけます。
「いってくる」
玄関から光があふれ出て、人は朝を感じます。
お父さんは子どもの手を握って歩きます。
新聞配達のために、学費を免除されている新聞配達員は、余裕を持って学校へ行きます。
大学生はのんびりしすぎて、急いで玄関を出ます。
おじいさんは今年も山登りを続けるためにジョギングをしだします。
ジョギングの先々で自分よりも若い人がひいひい言いながら走っているのを見ます。
(山で足手まといには絶対にならない)
おじいさんは強く思いながら謙虚な気持ちで走り続けます。
道行くジョギング仲間に挨拶をします。
「おはようございます。いい朝ですね」
みんな微笑みながら挨拶を交わします。
大学生の母親は家事を済ませた後は、生け花と社交ダンスのサークルに行くスケジュールが入っています。
お弁当を持たせて、お父さんと子供を先に行かせたお母さんはデザイナーで、自分のお弁当を持って洋裁の仕事に出かけます。
ファッションショーまでに衣装をそろえなければなりません。
朝の街は忙しく動き始めます。
小さな夢も、努力も、微笑みも、朝の挨拶から始まります。
「おはようございます」
なんでもない挨拶が、毎日のあたたかみを運びます。
そのあたたかみの傍らで、植物たちは人を見守り生きています。
朝です。
朝の、光です。
あたたかい朝の、「おはようございます」
posted by あさかぜ at 08:50 | Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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